研究内容

現在、アバターの活用方法やデザイン、文化等について、医療、教育、産業の観点から広く検討しています。

医療領域

SDGsの3つ目のゴールは「すべての人に健康と福祉を」です。これには心の健康 (メンタルヘルス) も含まれると考えています。より多くの人々にメンタルヘルス支援を提供するためには、テクノロジーが欠かせません。

アバターを活用したメンタルヘルス支援研究を進めています。例えば、アバターがユーザーの悩みを聞くという場合、次のパターンが考えられます。

(1) 公認心理師や臨床心理士といった心の専門家がアバターを介して相談者の悩みを聞く。

(2) 人は関与せず、自律型アバター (AIなど) がユーザーの悩みを聞く。

(3) 自律型アバターがユーザーの悩みを聞いたあと、心の専門家に繋ぐ。

(4) アバターや各種メンタルヘルスサービスが連携して、ユーザーの悩みに対応する。

しかし、現状ではAIがすべての悩みに対して、心の専門家同様に対応できるわけではありません。技術はもちろん、アバターを活用することの安全性やデータ管理、侵襲性、法律などをしっかり検討する必要があります。

アバターによるカジュアルカウンセリングの研究

熟練の公認心理師や臨床心理士による心理カウンセリングに対して、プログラムされたアバターが悩み相談を受けることをカジュアルカウンセリングとしています。

カジュアルカウンセリングは時間や場所に制限されることなく、実施することが可能であるため、メンタルヘルスサービスとしての普及が期待できます。将来的には、深夜に自宅にいながら、アバターに相談をすることが可能になるかもしれません。

バーチャルカウンセリングルームの違いとアバターに対する自己開示 [1]

部屋環境が異なるバーチャルカウンセリングルームにカウンセラーアバターを配置し、自身に関する情報をありのままに打ち明ける (自己開示) 程度を検証しました。その結果、大きい部屋にいる人は、小さい部屋にいる人よりもカウンセラーアバタに対する自己開示の意思が促進されることを示しました。

また、部屋の条件関係なく、質的内容としてセンシティブな話題 (親しくない人には語らないであろう内容) をユーザーがアバターに語ることが分かりました。

これらのことから、人が操作をしていない (独立して存在する) アバターに対して、センシティブな内容も含め、人は自身に関する情報を打ち明ける傾向があるのではないかと考えられます。

なお、研究当時は新型コロナウイルス感染症の流行が深刻であったため、VRChatを通じて遠隔の実験を行いました。

外観や相談状況によってアバターに対する相談意欲は変わるのか [2]

ユーザーが抱える悩みによって相談したいアバターも変わるのではないか

[1] Kawakita, T., Sasaki, T., Ishihara, S. (2021). Remote Virtual Counseling and Effects of Embodied Cues: Toward Casual On-Line Counseling Under COVID-19 Situation Proceedings of the AHFE 2021 Virtual Conferences on Design for Inclusion, Affective and Pleasurable Design, Interdisciplinary Practice in Industrial Design, Kansei Engineering, and Human Factors for Apparel and Textile Engineering, Lecture Notes in Networks and Systems, 260, 952-960. DOI:https://doi.org/10.1007/978-3-030-80829-7_116

[2] 川北 輝・大西 厳・石原 茂和・橋本 健汰・金井 秀明 (2022). カウンセラーアバタの外観とユーザの相談状況の違いが相談意欲に及ぼす影響の検討 日本感性工学会論文誌, 21(3), 267-274. DOI:https://doi.org/10.5057/jjske.tjske-d-22-00001